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イレッサ訴訟の概要と問題点


イレッサ錠は、2002年8月に副作用が少なく、効果が非常に高い薬として販売された抗がん剤です。肺がん患者にとって期待できる薬として販売から多くの患者に使用されましたが、副作用である間質性肺炎などで承認から半年で180人、2年半の間に557人という多くの患者の命が奪われました。

イレッサ訴訟とは

国が新薬を承認するための過程には、製薬会社が開発した薬を動物や細胞を使っての非臨床試験を行うこと、そしてその試験を通過した薬のみが人に対して投与される臨床試験(治験)を行い必要があります。臨床試験では薬が人間にとって有効で安全なものかを繰り返し行い、その結果を収集して判断していきます。そして、有効性と安全性が証明されて、厚生労働省に申請し、審査を経て承認されれば販売することができます。

治験には3段階に過程があります。まずは健康な人に投与して安全性の確認ができた後に対象の患者へ投与し、この情報をもとに最終確認のために一定規模の患者に投与が開始されます。しかし、抗がん剤の申請では、対象患者の投与で一定基準の縮小効果が認められれば最終確認の段階を経ずに承認できるのです。

イレッサ錠の治験では、副作用の間質性肺炎で死亡する可能性が確認されていましたが、製薬会社は生命の危険性がないと報告書に記載していたのです。また、肺障害に悪化も確認されていましたが、承認後まで厚生労働省に申請もしていないという事実があります。国も承認過程において、適切なデーターの確認作業を怠り、審査会で事実を報告していませんでした。

承認後の製薬会社の宣伝方法も重篤な副作用について周知できるような方法がとられていませんでした。イレッサ錠での間質肺炎の発症率は4%以上であり、ほかの抗がん剤は1%未満ということからも副作用の発症率の高さが分かります。しかし、事実を知らされないまま多くの患者が死亡しました。そのため、患者家族が薬を製造販売するアストラゼネカ社と国を相手に訴訟を起こして、裁判が開始されました。

患者家族や製薬会社・国の主張

イレッサ錠を使用した患者家族は、イレッサ錠を使用するにあたり医師は患者へ十分な説明と服用後の適切な経過観察が行われていなかったと訴えました。このようなことが起きたのは、販売元である製薬会社の添付文書が適切ではなかったこと、治験結果からも致命的な危険性が確認されていたにも関わらず、回避する手段を用いなかったことが原因であると主張しました。また、販売を承認した国は、薬害被害を出さやいように安全性の確認や販売元への指示など最善の義務を怠った責任があるといっています。

一方、製薬会社および国は、イレッサ錠を使用する際の適切な説明や注意喚起を継続してきたことを主張しており、説明責任においては医療現場での問題としました。また、添付文書に副作用情報も記載されていたため国に責任があったとは言えないとしています。

イレッサ錠投与に至る問題点

承認申請過程での問題点は、治験結果を適切に報告していないこと、一定基準の縮小効果は確認できたが延命効果についての確認は行われていなかったことです。販売や使用においては、安全面のみ浸透される宣伝方法であったこと、医療機関への添付文書が適切ではなかったこととされています。

患者の被害が認められた後も正確な情報取集や評価がされていないことが原因で被害が拡大したことが考えられます。医師についても、イレッサ錠の知識不足のため副作用の発見が遅れた可能性が指摘されています。

アメリカは2005年に効果が期待できないと使用が禁止されており、日本では2011年10月より使用患者の適応が限定されることになりました。しかし、それまでの期間、効果の検証を行うことなく使用され続けていました。

裁判の終結

2013年4月12日に最高裁で、イレッサの有効性を認める判決がでました。特に、裁判では添付文書に副作用の記載が不十分であるとの訴えが重要な論点になっていましたが、急速に悪化する間質性肺炎を予測できたとはいえないとして、製薬会社に欠如はないとの判断でした。先に同月2日にも国の責任を否定する判決が決定していたため、この日をもって裁判の終結を迎えたのです。

2010年、間質性肺炎での死亡患者は34人でした。これは安全対策が確実に行われる環境が被害を抑えられたと考えられます。どんな薬であっても、使用の際には適切な情報と正確な知識を持つことが大切です。