ナースプラクティショナーとは、医師の業務独占である診断や治療、薬の処方などを行うことのできる特定の看護師です。
ナースプラクティショナーを導入している国は、主にアメリカ合衆国、カナダ、オーストラリア、イギリスであり、日本においては国家資格としての導入を検討しているが、現時点で日本には存在のない職種になります。
ナースプラクティショナーと一般的な看護師との違いは、通常は医師が行うべき医療行為を、実際に患者に施すことができるといった点にあります。
看護師の行える医療行為は、採血、点滴薬剤の投与、注射(静脈注射、皮下注射、筋肉注射など)、導尿や膀胱留置カテーテルの挿入、痰や異物の吸引、胃管(マーゲンチューブ)の挿入などがありますが、原則医師の指示がなければ実施することはできません。
これに対し、ナースプラクティショナーが行える医療行為は、看護師の行える医療行為に加え、病気の初期診断に基づき独自で薬の処方や投薬などを行うことができます。
尚、外科的手術は実施することができないとされています。
また、必要に応じて医師や他の医療提供者に紹介したり、健康教育を推進する役割も担っています。
言わば、看護師の役割であるケア(援助)と医師の役割であるキュア(治療)を両立させた、そんな職業です。
ナースプラクティショナーのメリットは、
①医師のいない過疎地での医療の貢献
②低コストで必要な医療サービスを供給するシステムとしての機能、
があります。
とくに、アメリカでは医療費や医師への給与が高額である理由から、
②は医療コストの削減につながり、平等な医療の提供に貢献できるのです。
では気になる資格取得について説明します。
ナースプラクティショナーは、一定以上の経験を有する看護師で、加えて、専門職大学院において専門的な教育課程を終了した者が資格取得の権利を得ることができます。
日本の、専門看護師の資格取得方法と類似してますね。
また、アメリカは州単位での規制によって規定されている為、その州で資格を取得した場合は、その州内においてのみ有効であり、他の州の病院で働く場合は改めて資格を習得する必要があるのです。
(これはナースプラクティショナーのみならず、医師や看護師も同様)
先ほど、日本においても導入を検討していると言いましたが、実際はどのような動きがあるのか気になりますね。
日本においては医師不足といった観点からナースプラクティショナーの導入を検討する動きも見られており、既にナースプラクティショナーの養成をスタートさせている教育機関が存在します。
(大分県立看護科学大学、国際医療福祉大学大学院など)。
しかし、ナースプラクティショナー導入に対して、日本医師会は医師不足の解消自体を最優先に考える必要があると、新たな資格の導入には反対の姿勢をみせています。
また、当事者となりうる日本看護協会は、検討の段階にすら至っておらず、今後の課題となりそうです。
その背景には医療の質や安全の確保といった面や、保健師助産師看護師法のようなナースプラクティショナーに関する新たな法的基盤を設ける必要があるといった面から、今後の動向がどのように変化するかは、未だに先が見えない状態なのです。
ただ、医師不足の解消に関して、医師の資格取得はその難易度の高さから、簡単に解決できるとは限りません。
また緊急時に医師を呼び出しても、「他の患者の処置ですぐには向かえない」といった場面も多く存在します。
もし、ナースステーションに1人でもナースプラクティショナーがいれば、医師が向かうまでに、ある程度の簡易診断と対症療法が行え、早期治療に繋がりますし、医師の重労働にも対処できます。
日本での導入には様々な問題があり、なかなか検討が進まないのが現状ですが、どのような方向性になるか、今後も目を離せないですね。