健康を維持するためには、食事や運動が大切なのは皆さんご存知の通り。
では足のケア、いわゆる「フットケア」が健康につながることは、どれだけの方がご存知でしょうか。
特に高齢者は、フットケアなくして健康なしといっても良いくらい、
足の健康は心やからだ全体の健康につながるのです。
私達がなにげなく行っている「歩く」という動作。
実は、歩くだけで体重の約2倍の負荷が足にかかり、階段昇降ではなんと約7倍の負荷がかかっています。
歩き続けたり、階段の上り下りで「足腰にくる」とよくいうのは、それだけ足に負担がかかっているからなのです。
重たい身体を足に乗せているわけですから、まさに縁の下の力持ちですね。
足は寛骨(=骨盤)と、大腿骨という長くて太い骨、脛骨、腓骨、膝蓋骨の膝やすねの骨、その下にある26個の骨と、
クッション材の役割をする小さな種子骨という骨2つの、合計33個の骨で成り立っています。
大腿骨が細かったら立ち上がるときに簡単に折れてしまいますし、足の26個の骨がたったの数個しかなかったら、
私たちはうまく歩くことができません。
私たちは運動すると、身体が疲れますね。足も同じで、負荷がかかっている状態が続くと、
足も疲れてしまいますし、最悪怪我や病気にもつながります。
では、もしも足を怪我してしまったら、あるいは関節を痛めてしまったら、どうなるでしょう?
若い方は安静にしていることで、比較的治りは早いかもしれません。
しかし、高齢者は足の痛みから動くことが億劫になり、座ったり寝てばかりいることで、
筋力はあっという間に低下してしまいます。
ちなみに、一週間安静にしていると約2割の筋力が低下し、
三週間だと約6割の筋力が低下してしまいます。
たかが2割と思われるかもしれませんが、実際は1日寝たきりで過ごしていると、
回復までには1週間を要しますので、
もし高齢者が怪我をして1週間寝たきりになってしまったら、相当な筋力低下が予想され、
以前のような元気な身体にまで戻らない可能性もあるのです。
そうなると、歩くことができず家の中で過ごすことが多くなり、
外の世界との繋がりが希薄になることで、うつ病につながるおそれもあります。
これは大袈裟な話ではなく、実際によくある症例です。
そのため、足の健康はからだ全体の健康につながるのです。
フットケアは日頃の足の疲れを緩和する以外にも、足に異常がないかチェックしたり、
日常のケアで怪我の予防にもつながりますし、いいことづくめなのです。
フットケアといっても、何をどうしたらいいの?という方のために、
簡単なフットケア方法を何点かご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
ただ足を眺めるだけではありません。
爪は深爪になってませんか?
爪が伸びすぎてませんか?
巻爪になっていて痛みを伴っていませんか?
爪の端が足の皮膚にくいこんで化膿していませんか?
足のどこかが赤かったり紫色になっていたり、痛みを伴っていませんか?
足に傷はできていませんか?
特に糖尿病をお持ちの方は、合併症として神経障害や動脈硬化があります。
神経障害があることで、足に傷があることに気づかず、放置して足が壊疽を起こし、
最悪の場合、足を切断しなくてはならなくなります。
毎日足を観察することで、小さな変化も見逃さず、異常の早期発見につながります。
これは誰にでもできるフットケアの一つです。
足は心臓から最も遠い場所にあるので、血流が悪くなりがちです。
歩くことによって、負荷を和らげるためのクッションとなる足のアーチがポンプの役目となり、
足から心臓へ血液を戻しやすくします。
その結果、足の血流が良くなるというしくみになっています。
足の冷えも血液循環には大敵です。
足が冷えると足の爪の色が紫色になっているのを見たことがありませんか?
それは抹消の血液循環が悪くなっているために、皮膚の色が悪くなっているからです。
冷えを防ぐためには、足を温めるのが一番ですが、これには温浴(温かいお湯に足をつける)や、
足趾・足底などのマッサージなどが効果的です。
他にも、膝の屈伸運動や足首を動かしてつま先を上下に動かしたり、
つま先を持って足首を回すのもよいでしょう。
足のアーチが崩れてしまうと、偏平足や開張足(足の人差し指の付け根にタコがよってしまう)となり、
足にかかる負荷を和らげることができず、腰や膝に大きなダメージを与えます。
これを防ぎ、足のアーチを保つために、“タオル引き寄せ運動”をお勧めします。
タオル引き寄せ運動はとても簡単。床にタオルを敷いて、
その上(タオルの手前側)に足を置き、足の指だけを動かしてタオルを自分の方へ引き寄せるだけ。
これが意外に難しい!
私もやってみましたが、私は外反母趾があるため、
足趾にうまく力が入らず、全くタオルが動きませんでした。
はじめは難しくても、練習すれば誰でもタオルを引き寄せることができるようになります。
きつい靴を履くと足の血行が悪くなったり、爪が変形するなど好ましくありません。
逆に大きすぎる靴は、靴の中で足が動いてしまい、足のアーチが崩れる原因となります。
適度な靴選びは重要です。
煙草を吸うことで血管を収縮させます。そのため、足の血流を悪くするのです。
また、動脈硬化を悪化させるので、特に糖尿病と診断された方はこれを機に禁煙しましょう。
ここまで簡単に説明しましたが、足は文句も言わずに毎日私達の身体を支えてくれています。
そんな足を労わり、一日の終わりに温かいお湯で疲れを癒すなど、
スペシャルケアをしてあげるのもよいのはないのでしょうか。
高齢者は特に足の機能が落ちると一気に寝たきりになりやすくなります。
いつまでも健康でいるために、常にフットケアを忘れずに。