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動脈血ガス分析と基準値≪目的や方法≫


●重要なのに分かりにくい!
動脈血ガス分析検査の読み方と評価の仕方

動脈血ガス分析は、通称“血ガス”と呼ばれていることが多いと思いますが、
急性期で働く看護師にはもちろん、慢性期の病棟や内科病棟で働いていても
とても身近なものでありながら、仕組みが複雑でなかなか理解し難く、
学生の頃の実習や新人の頃に苦しめられたという記憶のある方も多いのではないかと思います。

血ガス検査の概要を理解するためには、検査で分かる項目の相互関係を覚え、
それぞれが起こる機序の理解も必要であり、
筆者も国試に向けた勉強中や手術室での勤務中かなり手こずったことを覚えています。

今回は、そんな血ガス検査について簡単にご紹介したいと思います。

分析と検査の概要

肺には、酸素を取り込み不要な二酸化炭素を体外に排出する非常に大切な換気機能があります。

さらに、今度はその換気機能によって取り込んだ酸素を、肺胞を通して
血液中の酸素や炭酸ガスと交換する呼吸機能という重要な役割も持っています。

そして、このガス交換機能は肺や胸膜などに炎症が起こると、
その働きに支障をきたしたちまち血中の酸素や炭酸ガスなどの濃度が適正でなくなってしまいます。

そのため、この機能が正常に働いているかや血中の酸塩基平衡を調べるために
動脈血のガス値の分析を行うというのがこの検査の大きな目的となっています。

検査の仕方は、橈骨動脈やソケイ部の大腿動脈、
上腕動脈より血液を採取し、血液ガス自動分析装置にかけて分析します。

血中の赤血球や白血球は採取後も時間の経過と共に酸素を消費し、
検体の酸素濃度を低下させて検査値に影響を与えるため、
採取した検体は10分以内に検査機にかける必要があります。

この検査が適応となるのは、全身麻酔下の周手術期の患者、
呼吸不全・呼吸困難が見られる患者、人工呼吸器装着中の患者、
その他意識障害やショック状態など重症患者となっています。

正常値・検査基準値

・pH(水素イオン濃度):7.35~7.45 
・PaO2(酸素分圧):80~100mmHg
・PaCO2(二酸化炭素分圧):35~45mmHg  
・SaO2(酸素飽和度):95%以上

上記の他に、血ガス検査では「血漿重炭酸イオン濃度(HCO3、Base Excess(B.E.))」の値も
知ることができるのですが、これは血ガス測定器で実際に測定されるものではなく、
pH、PaO2、PaCO2の値から計算によって求められるようになっています。

この検査で分かること

pH7.45以上の状態はアルカローシスと呼ばれ、
アルカリ血症(アルカレミア)になっているということが分かります。

嘔吐のため胃液が減少する酸喪失や、利尿薬の過剰使用、
腎臓・内分泌疾患などによって代謝性アルカローシスになると、PaCO2は変化せず、B.E.が上昇します。

また、低体温や過換気症候群、人工呼吸器の換気量過量設定などによって起こる
呼吸性アルカローシスでは、PaCO2が低下しB.E.は変化しません。

一方pHが7.35以下になると、アシドーシスと呼ばれます。

この病態は酸血症(アシデミア)といい、下痢などによって引き起こされる
代謝性のアシドーシスを呈すると、PaCO2の変化はなく、B.E.が低下します。

他にも糖尿病性や尿毒管性、さらに重症敗血症の際にも
乳酸が体内に蓄積することで高度の代謝性アシドーシスになることがあります。

また、発熱やシバリング、気道閉塞、人工呼吸器の回路リーク、
COPD、肺梗塞、呼吸数の減少などの呼吸不全状態や糖質の過剰投与によって起こる
呼吸性アシドーシスでは、PaCO2が上昇しB.E.の変化は見られないという特徴を持ちます。

ちなみに、PaO2の値が60mmHg以下またはPaCO2の値が45mmHg以上になると
呼吸不全の状態であると判断します。

上記にあてはまらない検査値パターンとして、
「PaCO2が上昇し、B.E.が低下する」という病態もあり、これは混合性アシドーシスと呼ばれます。

このように、同じアルカローシス、アシドーシスという病態であっても
その原因の可能性は実に多岐に渡るため、値の異常を早期に察知し、
それを起こしている原因をいち早く明確にすることが極めて重要となります。

代償機転が働いている場合

様々な原因によって血中の酸塩基平衡が崩れると、正常な臓器が、
働きが悪くなった臓器に代わって酸塩基の障害を調節し、pH を正常範囲に戻そうとし始めます。

これを代償作用と言い、肺の働きが悪くなった際には代わって腎臓が、
腎臓の働きが悪くなった際には代わって肺が、酸塩基の平衡を保とうとします。

この病態の特徴には、「pH には変化が見られないがPaCO2やB.E.に変化が見られる」ということがあり、
それらを見極めることによって腎性代償や呼吸性代償を判断することも可能となります。

採血時の看護師の介助

動脈血の採取は基本的に医師が行うことが多いと思うのですが、
Aラインが留置されている場合には、看護師は医師が採血したシリンジを預かり、
エアーを抜いて針のストッパーを閉め、凝固を防ぐために手のひらに挟んで
ゆっくりと撹拌した後、速やかに測定器にて測定を行います。

Aラインがすでに留置されている場合には、
三方活栓より看護師が採血する機会も多いかもしれません。

動脈穿刺によって1回のみの採血を行う際には、医師の介助を行い、
採血後5分間ほどシルキーテックステープなどで圧迫止血を行います。

この時には、穿刺部の完全な止血の確認や止血のために使用した
圧迫物の除去を忘れないといったことに注意が必要となります。

動脈への穿刺は、医療行為にあたるため原則医師が行うことになっている施設が多いかと思います。

しかし、看護師の動脈穿刺を明確に禁止する条文は現時点では見当たらず、
施設によっては「医師の指示」によって看護師が動脈穿刺を実施しているところもあるようです。

ですが、動脈穿刺は神経損傷のリスクが高く危険も多い処置の一つですので、
できる限り医師に任した方が良いのではないかと思います。