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医療施設の重要課題「院内感染」の定義とは?


院内感染症の一般的な定義は、「病院における入院患者が原疾病とは別に、
新たに羅患した感染症、または医療従事者が院内において羅患した感染症」とされています。
(藤田保健衛生大学 感染委員会HP抜粋)

また、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の定義では
「入院後48時間を超えて発症した感染症」が院内感染症であるとしています。

日本においては、病院や医療機関内で医療従事者や患者、またはその家族を介したり、
医療器具などを介して他の患者や医療従事者が、
新たに細菌やウイルスなどの病原体に感染することを言い、
患者の場合には入院後2~3日以上経過した後に発症したものがそれに当たるとされています。

医療関連感染

最近では、『医療関連感染』という言葉も聞かれることが多くなってきましたが、
これは2004年にCDCの
「隔離予防策のガイドライン:医療現場における感染病原体の伝播防止(草案)」の中で、
“病院感染”という表現をやめて提唱された用語です。

これによって院内感染・病院感染という用語も、世界的には在宅ケアでの感染を含めた
「医療関連感染(HAI)」と言われるようになってきています。

院内感染の発生件数が高い患者の特徴としては、免疫機能が低下している女性の尿路感染症、
手術後の術創感染症、長期臥床療養の高齢者に多い肺炎などが挙げられます。

問題となる病原菌や発症するおもな病気とは

原因となる病原菌については、薬剤耐性を持つ微生物であったり、
本来は病原性の低い微生物であることが多く、これは日和見感染と呼ばれるものです。

そして、この院内感染は大きく2つに分けられます。

自己感染経路と交差感染

一つは「自己感染経路」と言われるもので、元々自分の体内に存在していた常在菌が
体の衰弱に伴って他の部位に感染し発症したものです。

もう一つは「交差感染」と呼ばれるもので、患者以外の他者や医療器具、
または空気感染などによって感染・発症するものです。

院内感染の代表的な病原菌としては、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)がよく知られており、
発生件数も1980年代以降はその首位を占めています。

MRSA

このMRSAは、ペニシリン系・セフェム系抗生物質やアミノ配糖対系抗生物質など
多くの抗生剤に対して耐性を持っている多剤耐性の黄色ブドウ球菌です。

この病原菌は、人から人へ、または医療器具を介して他者へといった接触感染に加えて、
シ-ツ交換などの環境整備後の空中への浮遊、病室内の物品、汚染された寝具といった環境経路等、
本当に様々な要因によって媒介されるため、
入院環境の中には常にその感染の危険が潜んでいると言えます。

また最近では、多剤耐性MRSAの治療の第一選択薬として用いられている
バンコマイシンに耐性を持った、バンコマイシン耐性腸球菌(VRA)による感染も
発生件数が増加しており、大きな問題となってきています。

院内感染によって発症するとされている、その他のおもな病気については、
B型肝炎やアスペルギルス症、クリプトコックス、
レジオネラ症、セラチア菌などもあります。

さらに冬場になると、インフルエンザやノロウイルス、ロタウイルスといった
流行性の感染症の集団感染なども起こりやすくなり、
ニュースでもたびたび取り上げられることがあるため
目にしたことがある方も多いのではないかと思います。

最も重要な感染予防対策!標準予防策とサーベイランスとは

このように、病院という非常に多くの人や物、
さらには病原菌が行き来している環境の中での治療過程においては、
療養している患者が本来の疾病以外の不要な病気を発症してしまわないように、
またはそこで働く医療従事者が不要な感染を起こしてしまわないよう、
媒介経路にもなりやすい医療従事者の徹底した予防・管理対策が非常に重要になってきます。

感染制御の組織化

その方法としてまず重要となるのが、感染制御の組織化と言われています。

病院組織単位で感染対策委員会や感染対策チームなどを設置して、
いかに徹底して院内感染を予防するか、また感染が発生した際には
すべての職員が効果的な拡大制圧の対応を取ることができる感染対策マニュアルを作成し、
職員への周知徹底を行うことが非常に重要ということです。

この感染対策マニュアルには、病院全体で活用できる総合的なマニュアルと、
特殊性のある部署別のマニュアルの整備も行う方がより効果的です。

そして、その委員会やチームによって適切なサーベイランス(監査調査)の実施と
アウトブレイクの察知が行われることも重要となります。

通常時の日常的な感染症の発生状況を適切に把握できるシステムを確立して管理することを意味する
サーベイランスを行うことが、実際にアウトブレイク(感染症例の集団発生)が起こった際の、
いち早い状況の察知と適切な初動対応に繋がっていくということです。

標準予防策(スタンダードプリコ―ション)の徹底

また、看護師などの現場のスタッフができる予防対策行動には、
医療の現場で最も重要な感染予防対策と言われている
標準予防策(スタンダードプリコ―ション)の徹底が非常に効果的なのですが、
それに加えて病態・疾患等に応じた感染経路別の予防策を
明確に記載したマニュアルを作成することによって、
予防行動に「防御環境」という概念を加えることができ、
感染しやすい患者さんを保護するということにも
重点を向けた対策を行うことができるようになるということです。

他にも日常的な勤務の中で、手洗いや手指消毒の徹底、
針刺し事故防止やワクチン接種によって対応できる感染予防策を取ることによって、
職業感染を防ぐことも大変重要と言えるでしょう。

また、適切な環境整備と定期的な施設内の微生物調査、
器材の確実な洗浄・消毒・滅菌作業、周手術期の感染防止、
血管内や尿路などに留置されるカテーテル関連の感染対策、
抗菌薬の濫用を避けるなどの抗菌薬耐性菌対策、
感染性廃棄物の適切な処理
などにも留意することによって、
できる限り院内感染やアウトブレイクが起こらないように、
それらの防止に注力すべきであるといえるのではないかと思います。