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医療過誤と医療事故の違いとは?防止策について考える


医療の現場で働く上で患者さんの身に何かしらの不利益が起こった場合、それは『“医療ミス”、“医療事故”が起こった』と言われます。

医療事故は、医療従事者の明らかな過失によって生じたものと、医療従事者側が十分な医療を提供していたにも関わらず、不可抗力によって生じたものに分けられます。

診療過誤とも呼ばれる

この“医療従事者の明らかな過失によって生じた患者の不利益”は、『医療過誤』と呼ばれ、診療過誤とも言われます。

医療側の過失、つまりミスと言われるものは、医師や看護師などが治療や看護を行う際に、「資格者として当然払うべき注意」を怠ったために、患者に不当な傷害を与えてしまった場合です。

医師の場合には、誤診や不十分な処置、手術操作時のミスなどが挙げられ、看護師においては具体的には、衛生管理の不徹底による感染や誤薬、看護援助の際の事故などがあります。

看護師として日々仕事をしていると、時にはいくつかの小さなミスが起こります。

インシデントとアクシデント

看護師だって人間ですので、過密な勤務シフトが続いた時や夜勤中、夜勤明けなど、さらにはやることがたくさんあってあたふたと冷静さを失っている時には、何かを見落としたり、忘れたりするのはやむを得ない事であると思います。

そんな日々のミスの中で、患者に直接的な影響を及ぼすに至らなかったもの、事故になる一歩手前で食い止められたものをインシデントといい、そこで気付かれずに間違ったまま実行してしまい、患者に対して実際に傷害を生じさせてしまったミスを、アクシデントといいます。

この、適切な処置が行われないままに実行された間違いによって発生した事象(アクシデント)が、医療過誤というわけです。

ちなみに、リスクマネジメントの領域においては、医療事故は「医療に関わる場所で、医療の全過程において発生するすべての人身事故」をさします。
ですので、針刺し事故なども医療事故に含まれています。

このように医療過誤とは、そこに過失があるか無いかが重要な判断基準となっており、一見「医療事故」という言葉と混同されて解釈されがちなのですが、明確な定義の違いがあるということになります。

看護師の注意義務と3つの法的責任、そして医療裁判の時効とは

医療事故のうち、「医療過誤」の可能性があると判断された事例の場合には、時として被害患者側から、訴訟を起こされることになります。

その訴えは、医療過誤が生じなければ得られた利益である逸失利益の賠償について、また医療職者として相当の注意義務が果たされていたのかという点について審議するものとなっているようです。

病院などで行われる医療行為については、その一つ一つが人間の生命・身体に様々な影響を及ぼすため、高度の注意義務が課されています。

これは直接的な治療や処置を行う医師のみでなく、看護業務についても医療行為に準じた高度の注意義務が課されていると考えられています。

そして、看護師も医師と同じく民事責任、刑事責任、行政責任という3つの法的責任を負っています。

このため、医師による治療上の不注意と看護師の業務上の不注意が共存して患者の生命・身体に対して損害を与えた場合には、直接的に患者に損害を与えた医師と、注意義務を怠った看護師の双方に不法行為が成立することになります。

対価を払って治療を受ける選択を行った患者には、“相当かつ十分な水準にある適切な治療を医療機関から受けること”を期待する「期待権」という権利があるとされており、医療訴訟においてはこの期待権の侵害が争点となることもあります。

また、医療過誤の事例にも実は時効が存在していて、事案の内容によって『不法行為責任の請求権』では3年間で時効が成立、時効の停止などの要件を満たした場合であっても20年が経過すると時効とは関係なく不法行為による請求はできなくなるようです。

しかし、20年が経過していても『債務不履行』に基づく請求については時効が中断することがあるため、その場合には訴訟を起こすことができる可能性があるということです。

看護師に多い誤薬と未然に防ぐ方法

看護師が起こしてしまうミスで最も多いものは、やはり誤薬です。
事前にミスに気付くことなく実際に投与薬してしまい、患者を重篤な事態に陥らせてしまった場合には医療過誤となってしまいます。

他にも、部署や職務の特殊性によっても看護師が引き起こしてしまうトラブルはたくさんあると思います。

例えば手術室の看護師の場合だと、術中に使用したガーゼや器具の体内残存に気付かなかったといった事例には、看護師の注意義務不履行が適用されることになります。

治療過程における過失というと医師が起こすことが多い印象があるのですが、近年では看護師が訴えられ、賠償責任に繋がっている事案というのも増加してきているようです。

一方で、どの医師が見ても医学的にはなんら問題がないと判断される結果について、患者側が納得できないという理由から、ミスだと指摘されることもあるようです。

この場合には、その訴えは「クレーム」として取り扱われます。
患者がやむを得ない結果に対して納得できないと訴えてきた際には、医師と共に看護師も受容・共感・要約・対決といったプロセスを経て、患者の心理状態に配慮をしながら対応することが重要となります。

最終的な検査の指示や治療などを施すのは医師ですので、実際に医療過誤で訴えられてしまうのはやはり医師が多いのですが、看護師が訴えられることも当然あります。

さまざまな事例

これまでに起こった医療事故や医療過誤の事例を読んでみると、看護師が医師に細かな確認を徹底していたり、今起こっている現状に“違和感”を感じる知識と経験があり、医師に十分に相談できるだけの環境が整っていれば、防げた若しくは死亡には至らなかったであろう事例もいくつか見られるなと感じました。

医療が人間の手によって行われる以上、過失を全く発生させないというのは難しいことではあるのですが、それでも最善を尽くして努力していた治療・看護過程の中で医療過誤が生じてしまうと、医療従事者は業務上の注意義務を怠ったとして多くの責任を問われることになります。

たしかに医師や先輩看護師の中には、看護師や後輩の意見を聞いてくれなかったり、軽くあしらったり、不機嫌なるような方もいないことはないのですが、それに屈してしまって気になっていたのに口にできなかったことで、万が一患者さんが最悪の事態となってしまった場合には、医療訴訟に発展してしまったり、そこに巻き込まれることがなかったとしても、後々看護師として仕事を続けていくにあたって、自分の十字架となってしまい退職を選択せざるを得なくなることにもなりかねません。

このため、医療過誤を未然に防ぐには、看護師も含めたスタッフ一人ひとりの十分な知識と経験に加え、チーム内での円滑なコミュニケーション環境を日頃から十分に構築しておく必要があるのではないかと思います。