日々の看護援助技術の中でも、「吸引」は比較的身近でよく行うものなのではないかと思います。
術後のために自力で痰の喀出ができない患者さんや、高齢者や寝たきりの患者さんなど、吸引を必要とする場面は実に多いですよね。
なので、日々勤務をしていると比較的すぐに習得できる技術であるとは思うのですが、新人や実習で経験する看護師にとってはやはり緊張度の高い手技の一つであるので、ここでもう一度おさらいしておきたいと思います。
口鼻腔吸引は、自力で痰などを喀出できない患者に対して、気道分泌物や貯留物の除去を行い、気道閉塞や呼吸困難を防止する目的で行われます。
正しい手技や吸引圧を遵守できていないと、患者に大きな苦痛を与えてしまうため、的確な手技と正しい知識の習得が重要となります。
ここで、再度口鼻腔吸引の手順を確認しておきたいと思います。
吸引処置には様々な合併症が起こる可能性があり、時には重篤な状態に至る可能性もあるため、吸引中から処置後に至るまで十分な観察が必要となります。
まず、吸引中には気道粘膜の損傷や無気肺などによる、出血や低酸素血症、また低酸素血症に伴って起こる迷走反射による不整脈や徐脈、血圧低下などにも注意が必要です。
そして、処置中にはこれらの兆候が見られなかった場合でも処置後に急変…という可能性もあるため、吸引後も注意して観察を行います。
吸引処置は、患者さんにとってはとても侵襲性が高く非常に苦痛を伴う処置です。
また、吸引による迷走神経の刺激によって不整脈や血圧低下、頭蓋内圧の亢進なども起こる危険があります。
このため、看護師は“本当に今吸引が必要なのかどうか”という点について、十分なアセスメントを常に行う必要があります。
そのためには、呼吸回数の増加や努力性呼吸の有無、SpO2の低下、狭窄音などを観察し、さらには循環動態が安定しているかについても注意が必要となります。
新人看護師や、意識レベルの低い患者さんの吸引に慣れていない看護師から、「吸引がうまくできない」、「食道にばかりはいる…」という声をしばし聞きます。
そこで、経験を積んだ看護師に話を聞いてみると、みんなやはり長年の経験から独自のコツを持っているようです。
ここで、いくつかその“コツ”をご紹介したいと思います。
まず、意識がない患者で食道に入りやすいという場合には、肩枕を入れたり頭部を後屈させて喉を伸展させた上で鼻腔吸引をするとうまくいきやすいようです。
また、どうにも食道に入りやすい…という場合には、吸引カテーテルを吸引管と軽く接続し、微圧をかけながら鼻腔に挿入していくと、吸い付いた痰に導かれて気管に入りやすくなるという技もあるようです。
さらに、最も多く聞かれたコツとして吸気時にチューブを挿入すると、気管に入りやすいというものもありました。
ちなみに、カテーテルが食道に入っているのか、気管に入っているのかそれ自体が分からない…とひそかに焦っている新人さんがいるなら、それは挿入時のカテーテルの進みの感覚や、咳嗽の質に違いが見られるので区別できます。
気管にカテーテルが入っている時にはスルスルと入っていく感触で、患者さんが咳をする際には激しくせき込んだりすると、気管に入っていると判断できるということです。
何はともあれ、これらの手技が上達するなによりの要因は場数を踏むことだと思います。
どうしても上手くいかない場合には、先輩にお手本を見せてもらったりコツを伝授してもらいながら、自分のモノにしていくことが上達の近道ではないかと思います。