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終末期看護と家族ケア~目標や計画~


患者とその家族に寄り添った看護ケア -人生の最期を家族と共に生きるということ-

人は誰でもこの世に生命を授かる限り、死というものを避けることができません。
特に病気を患った患者は、医師から病気や予後について告知されると、不安感や死への恐怖心がめばえ、これまで深く考えることのなかった自分の死について考えるようになります。

看護師は、他スタッフと比較して患者と接する機会がとても多いからこそ、患者のよろこびや悲しみ、悩み、苦しみなどにすぐさま気づくことができます。
また、一人の人間として「その人らしさ」を追及し、個人を尊重した関わりができます。
ここでは終末期患者の看護に焦点をあて、患者とその家族に寄り添った看護ケアについて考えてみたいと思います。

死を宣告されると、人はあらゆる感情が渦巻く

死の受容過程については、エリザベス・キューブラー・ロスが有名です。
キューブラー・ロスは余命わずかな200人以上の患者と直接面接をし、対話を重ね、死を宣告されるとどのような反応を示すのか、その過程を詳細に研究しました。

<死の受容過程>

  • 【否認、隔離】 自分に死が迫っているという事実を否認し、周囲と距離を置く。
  •             「自分が死ぬなんて嘘に違いない」

  • 【怒り】逃れられない自分の死を目の当たりにし、健康な人を羨み、妬み、怒るなど複雑に感情が絡む。
  •         「なぜこんな目にあわなければならないんだ」

  • 【取り引き】やはり死はやってくるのだと認識しながらも、何か交換条件を出せば死を逃れられるのではないかと考え、取り引きを試みる。
  •            「神様、全財産を寄付しますので、どうかこの命を救ってください」

  • 【抑うつ】どうあがいても死は避けられないことを悟り、絶望し、抑うつ状態になる。
  •           「どんなことをしても無駄。やはり自分は死んでしまうのか。」

  • 【受容】死を受け入れ、どのような最期を迎えたいかを考えることもできるようになる。心は穏やかになり、自分の死を自然なこととして受け止める。
  • 突然死を宣告されれば、あらゆる感情が渦巻くのは当然なこと。
    必ずしも否認⇒怒り⇒取り引き⇒抑うつ⇒受容の順にならなくても良いのです。
    これらの過程を進んだり戻ったり、時には順番を飛ばしたりしながら、死を受容していくのです。

    家族は患者にとって、とても大きな存在である
    死というものは、自分ひとりだけの出来事。
    とても孤独で不安で寂しいものです。

    そんな時、患者の心を支えることができるのは、医師や看護師ではなく、家族が一番の支えになります。
    家族を差し置いて、患者だけをケアするなんてありえません。
    またその逆なんてもってのほかです。

    死を宣告された患者を目の当たりにして、家族はどう対応したらよいのか戸惑うかもしれません。
    どんな声をかけてよいかわからず、立ちすくんでしまうかもしれません。
    けれど、何も特別なことはしなくて良いのです。

    患者が不安なこと、辛いこと、悲しいことなど話をしたら、じっくりと聴いてください。
    時には患者の身体を心をこめて拭いたり、ただ傍に寄り添うだけでも良いでしょう。
    もしも、あなたが死の宣告をされたら、赤の他人に話を聴いてもらうよりも、自分のことをよく知っている家族に話を聴いてもらいたいと思いませんか?

    戸惑う家族を受けとめ、支えることも大切

    死を宣告されて混乱するのは患者だけではありません。
    家族だって様々な感情が渦巻き、不安定になります。

    死が近づいていることを家族が受け止めるためには、現在の病状や今後起こりうることをしっかり説明した上で、迫りくる患者の死を隠さずに伝えることが重要です。
    そして、患者・家族ともに後悔なく最期の時間を過ごすことができるよう、看護師は患者-家族を調整します。

    患者と家族、スタッフ間で目標・計画を共有する

    患者は様々な心理的葛藤の中で、「自分はどのような最期を迎えたいか」を考えるようになります。
    また、やり残したことはないかなど身辺整理を始める人もいます。
    看護師は、自分の価値観を押し付けるのではなく、ありのままの患者を受け入れ、患者の自己決定を尊重することが重要です。

    時には患者と医師、患者と家族の橋渡しをすることもあります。
    看護師は様々な調整を行い、患者の希望にできるだけそえるよう精神的、身体的をケアを行うのです。

    そのため、できるだけ早い時期から、患者がどのようになりたいか(したいか)を患者本人と家族、医療スタッフで話し合い、目標を立てて実現できるように計画をたてることが大切です。
    目標・計画なしでは患者の意思が尊重されないばかりか、独りよがりの看護を行っていることになるのです。

    死後も家族ケアは続く

    いくら死の受容ができていても、少なからず家族にはストレスがかかります。
    また、「もっとできたことがあったのではないか」「私達(家族)のせいで苦しい思いをさせたのではないか」といったような後悔の念を抱く家族も多くいます。

    そんな時、看護師はありのままの家族を受け止め、患者に対して行ってきたことを評価し認めることが大切です。
    最善を尽くせたのだと実感できないといつまでたっても死を受け入れることはできず、死の悲しみとショックから心身のバランスを崩してしまいます。
    患者の死=家族ケア終了ではなく、その後も家族に対するグリーフケアとして続くのです。

    生きている限り避けることのできない死

    生きている限り避けられない死という出来事。
    死後の世界から戻ってきた人はいないため、色々と想像し不安や恐怖感に苛まれることもあります。

    ですが、人生の最期を愛する家族と共に穏やかに過ごせたら、「私の人生、無駄ではなかった」「幸せな人生だった」ときっと思えるのではないかと考えるのです。

    患者様の大切な人生の一ページに関わることができる看護師という仕事は、とてもすばらしい仕事であると思っています。